2011年5月10日火曜日

「運命のボタン」(The BOX)※ネタバレあり

「訳わからん」「最低の映画」「時間の無駄」などなど…散々な酷評を受けているキャメロン・ディアス主演の映画ですが、僕なりにこれはまあまあ面白かったなと思います。



前半50分は良かったという声が多いですが、この映画のポイントはまず、SFなのかサスペンスなのかというこっちゃ。



感想では宇宙人が絡んでいるといった意見が出ていたが、よ~く見てみると宇宙人は一回も出てこない。



箱を家に届けに来たアーリントン・スチュワードを宇宙人からの使者と捉えられなくもないが、彼は「雇い主」と言っているだけで、火星人とも地球外生命体とも言ってない。



では「雇い主」は誰か?



それはアメリカ政府だろう。



NSA(国家安全保障局)という単語がこの映画で頻繁に出てくる。



そもそもNSAとは何ぞやというと…



1952年11月4日に設立された、国家情報長官によって統括されるインテリジェンス・コミュニティーの中核組織のひとつであり、公式では海外情報通信の収集と分析を主任務としているが、組織の存在自体が長年秘匿させられた経緯などから、その実像には不明の部分も多い。本項の記載は公表された任務(海外情報通信の収集と分析)のみを中心に記述する。



合衆国政府が自国民をスパイするのは違法行為だが、他国へ諜報活動するのは違法ではない。海外信号諜報情報の収集活動に関して、計画し指示し自ら活動を行い、膨大な量の暗号解読を行なっている。また、合衆国政府の情報通信システムを他国の情報機関の手から守ることも重要な任務であり、ここでも暗号解読技術が鍵となる。



だそうだ。



火星探査に関わった人間、アーサーは探査機のカメラを開発した。映画の冒頭で火星探査に関する記者会見のシーンが出てくるが、そこでオバサンが「なんで、この記者会見の席にNSAの関係者がいるのか?」と質問する。



つまり、この火星探査においてアメリカ政府はある重要な機密事項を手に入れた。その情報を関係者が漏らさないためにBOXを使って、関係者を監視しているというのが核の部分。



最初に妻を殺したオッサンも関係者。彼はその後姿をくらまし、最後のトレーラーでひき殺されるシーンの直前にアーサーに資料をみせている。(この資料はあいまいにされているが、軍の資料なのではないか?)



じゃあ、後半のあの訳わからん部分はなんなのよ?というもやもやはこの映画の哲学的皮肉を込めたメッセージであり、ルイス夫妻の心情を映像として表現している。



図書館で気味の悪い連中が大勢ついてきたり、椅子に座っている利用者が一斉にアーサーのほうを見たり。これはアーサーが監視状態に置かれている精神状態を表している。



ここでシーンが一気にすっ飛んでいきなり自宅のベッドに大量の水と共に堕ちてくるのも、アーサー夫妻がMSAからの監視から解かれたことを意味し、最後のクライマックスへと繋がっていく。



おそらく、息子の遊び相手をしていたマサチューセッツの学生も諜報部員として、彼の家に入ったが、その罪の意識に苛まれ悩んだ。モーテルでの異様な光景はその象徴であり、NSAの秘密基地みたいなところで、行列の先頭で無表情な顔をしていたが、おそらく軍に人体へ何かをされた。



他人を犠牲にしてまで、己の欲を満たそうとすることがどれほど愚かなことかという道徳的なメッセージと、70年代当時の冷戦下でのアメリカの見えざる国家政策というミステリアスな部分をからませ、現代のアメリカ社会に警鐘を鳴らす映画なのです。



はい。