「20min」というドキュメンタリーをNHKで放送している。
一昨日、たまたまチャンネルを合わせたら、番組が始まるところだった。
始めは観ないでそのまま寝ようとおもったが、冒頭のナレーションに惹きこまれた。
「彼は28年間、ずっと手回しオルゴールを路上で演奏し続けている」
30歳で音楽教師を辞めた彼は生き方に悩み、そのとき自分と一緒に泣いてくれているように感じたのがオルゴールの音色だったのだという。
音楽を純粋に愛するが故に、生徒に通信簿の成績をつけることが辛かった。
次第に心のバランスが乱れ、不安や体調不良が続くようになった。
その結果、教師という仕事に別れを告げ、以来ひたすら自分の心の拠り所であるオルゴールの音色を奏でる毎日。生活環境はお世辞にもいいとは言えない。それでも彼は
「1万円あったら何に使いますか?」
という質問に、
「おいしいものを食べるわけでもなく、たぶんオルゴールの楽譜を買うと思います」
と、いった。
彼にとって唯一、自分が自分でいられるのがオルゴールを弾いているときなのだろう。
「好き」を続けることこそ、最大の喜びであり、最大の苦しみでもある。
生活保護を申請すれば、オルゴールも手放さなくてはいけない。
そんなギリギリの環境の中で、彼は今日も道に立つ。
自分には真似ができない。
どうしたら、そんなにひとつのことに心血を注ぎこめるのか?
暖を取るよりも、食事を取るよりも、身体を労わることよりもオルガンを優先する。
寒い石巻の路上で目をまんまるにして、彼の演奏に聴き入っている少女の姿が印象的だった。
※オルゴールと書くべきところをオルガンと書いていました。申し訳ありません。
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