2011年7月9日土曜日

精神疾患、5大疾病に。

一昨日のニュースだが、厚生労働省は6日、「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできた、がん・脳卒中・心臓病・糖尿病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とする方針を決めた。



うつ病や統合失調症などの精神疾患の患者は年々増え、従来の4大疾病をはるかに上回っているのが現状で、重点対策が不可欠と判断した。



08年の調査では、



糖尿病237万人



がん  152万人



に対し、精神疾患は323万人超える。また自殺者は近年、年間3万人を超えている。





さて、精神疾患が5大疾病に加えられたのはいいが、患者を取り巻く生活環境は厳しい。



一般的に何らかの症状で精神科・心療内科等にかかり、精神疾患と診断されると、まず大事なのは「休養」をとることである。この間、患者の生活費の保障は公的な傷病手当金、企業によっては期限付きで支給をしているところもある。



ここまでの期間で、症状が改善され職場復帰できれば問題ないが、多くのケースは無理をして職場に戻りオーバーワークになってしまうというのが現状だ。



そうなると、生活費は支給されないものの休職扱いとなる。この期間は貯金を切り崩すなどし、籍が会社にまだ残っているうちに戻れれば社会復帰の道はまだ残されている。



しかし、一定期間が過ぎると、会社側から、もしくは長期の休養で以前のような仕事にはつけないという患者の自己判断から「退職」を迫られることになる。



この時点で患者は自立した生活が困難になり、家族や夫婦など経済的に支えてくれる環境がない限り、生活資金が底をついた時点で生活保護の申請をすることになる。



ところが、実際に生活保護を受けている患者が多いかと言えばそうではない。パートやアルバイトでなんとか生活費を稼ぎ、社会復帰の道を必死に模索している。彼らの平均所得は月10万円前後。生活保護で約12万支給されているのに対してそれよりも少ない。



かといって、障がい者手帳をもらい障害年金を受け取れるかというと、そこまで重度ではなく、健常者と障がい者の中間で何の保証もないまま日々の生活を送っている。



今回の5大疾病に認定されたことで民間の保険会社が精神疾患の保険商品を出してくる事は考えにくい。



まず、第一に症状の具合が客観的に分からず、主治医と患者の間でその状態を決めている事。次に精神疾患を装い、不正受給する者が他の疾病よりも高い確率で出てくる。なかには医者が不正に診断書を作成し、治療費を横領するケースもでてきている。



国が認めても、精神疾患に至る原因は複雑で、何よりも今の日本社会において個人を取り巻く環境は職場でも家庭でも非常にストレスを抱えやすい。



負の連鎖で20~30代の貴重な労働力がどんどん社会からフェードアウトしてしまう今の状態は社会全体の構造を歪めてしまう危険性がある。労働生産能力が低下し、生活水準の質が低下しているなか、若者は家庭ももつ余裕さえもなくなってきている。



こういったスパイラルを何処かで断ち切らなければ、いつかそのツケは国に返ってくることになる。



彼らが安心して休養し、しっかり社会に戻れる仕組みを早急に考えなければならない。



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