2008年7月24日木曜日

九州縦断旅行~熊本編②~

7月14日



この日はフリー切符を買わず、熊本市内周辺を周ることにする。まず、はじめに行ったのが「水前寺成趣園」。細川家ゆかりの桃山式回遊庭園。で、着いた時刻が午前9時。観光客0。ほんとに誰もいない!ひたすら気温が上昇するのを実感するだけ…庭園内を周りつくして、時計を見ると9時30分。おいっ!!!終了~



入り口のおばさんのところに行き、近くにある「熊本洋学校教師ジェーンズ邸(夏目漱石第三旧居)」に観に行ってきてもいいかと聞いたら、再入園しても良いというので、そっちに向かうことにした。しかし・・・定休日。仕方がないので門の隙間から邸宅の写真を撮ることにした。たまに通り過ぎる通行人からは不審な目で見られ、向い側にあった幼稚園の園児がこちらを見ているのが明らかに分かった。その視線、痛すぎるぜ!!!また、あの庭園に戻っても灼熱地獄が待っているだけだし、どうしようかと悩んでいたら、市電の一駅先に「近代文学館」があった。どうやら、定休日ではないらしい。よっしゃ、行くべと思ったら、そういえば今日はフリー切符持っていないんだった。じゃあ、歩くしかない。途中、道に迷いながら360度太陽の光と熱が体に照りつけ、朝買った500ミリのペットはもう空になっていた。



歩くこと20分。ようやく近代文学館に着く。看板には入園料「無料」の文字が!タダほど嬉しいものはない。



館内に入ると、熊本で生まれたり、活躍した作家のパネルが関係資料と共にズラリと並んでいた。無料の割には充実している。知っている作家はほとんどいなかったが、横溝正史の特集コーナーや夏目漱石のブースは興味深かった。そして、もう一人まさかこの地でこの名前を聞こうとは、という作家が紹介されていた。その名は「内藤 濯」。あの「星の王子さま」の最初の翻訳者だ。なんで、僕と内藤 濯が関係があるかというと、以前僕は星の王子さまのライセンス管理の会社で働いていたから。内藤さんの息子とも話をしたことがあるし、色々とその節はお世話になったんです、はい。職員の人が建物の裏側に記念碑が建てられていると、教えてくれたのでせっかくだから見に行ってみた。その碑はこじんまりとしていたけど、星の王子さまと一緒に微笑んで刻まれている内藤さんの顔はずっと僕らを見守っているようでした。



なんだかんだで一時間以上、文学館にいた僕は庭園に戻ることにした。なんで、わざわざ庭園に戻るかというと、庭園内のお店にそうめんをだしているところがあったから。九州に来てからひつこいものばっかり食べていたので、どーしてもそうめんが食いたかったのだ。



庭園内のそのお店に入り、即効でそうめんを注文。出されてからわずか5分で完食。こんな、そうめんってうまかったんだ。いつも家で食べているときは、そんなにうまいと思わなかったけど…



もうこの場所に未練はない。市電に乗り込みいざ、「熊本市現代美術館」へ向かう。



熊本市現代美術館は繁華街のど真ん中にある超モダンな美術館だ。しかも、またまた入場料無料!



館内は図書館と美術館を足して2で割ったような独特の空間だった。ふらふらと館内を回っていると映像コーナーが。とりあえず、どんなものをやっているのかな~と見てみたら、ろう者(聴覚障害者)のドキュメンタリー映画があった。最初はちょこっと観ておしまいにしようと思って観始めたら、どんどんその作品に惹きこまれていった。ストーリー自体はろう者の日常風景をただ撮り続けているだけなのだが、インタビューのシーンで親から最初、耳が聞こえないことに気づいてもらえず、自閉症と間違われ精神病棟に送りこまれた人の話や、親族の5親等以内がすべてろう者という若者の話など、我々健常者では信じられないような現実が実際に起きていることに衝撃を受けた。印象的だったのは「私もろう者として生まれてきたかった」と語った健常者の女性。その女性の家族は彼女以外全員ろう者で、兄弟の旦那さんや奥さんも皆ろう者という、完全な「ろう家系」。家族とコミュニケーションを取るたびに自分は孤独を感じるのだという。そして、親も出産のとき、ろうであることを願ったという。こんないびつな愛情が生まれてしまった家族に、彼女がいる場所はなかった。結婚も然り、ろう者はろう者をパートナーとして迎え、健常者と結ばれるケースは稀だという。その子供もやはり、ろうの確率が高いのだという。こうした、閉鎖的な社会環境で生活する彼らは、表面上は健常者との共存を望んでいるようにみえるが、本音は「ろう社会」での安息を求めている。



僕は職員の人にこの映画はどこかで手に入らないか?と尋ねたが、あいにく外国の作品でネットでも販売されていないらしい。正直いって、この旅行のなかで一番印象に残った出来事だった。



予定に反して、丸々一本映画を観てしまった僕は、福岡に向かう高速バスに乗るため、急いでバスセンターに向かった。出発時間ギリギリに着くと、手荷物をトランクへ積み込み、この旅の最後の目的地福岡へと出発した。



福岡の博多駅に着いたのは午後5時過ぎ。ターミナルには明日行われる博多祇園山笠の山車が飾ってあった。この後、予想もしない出来事が待っていることも知らず、僕は今晩泊まる、ホテルを目指して歩きだした。歩くこと20分。どーしてもホテルが見つからない。地図上では絶対に間違っていないはずなのだが…辺りをうろうろしているとキャリーバックをもった外人が自動ドアの中へ消えていくのが見えた。もしや。横断歩道を渡り、その建物に行ってみると…。あった!今晩泊まるホテルだ!看板は…ある、あるがすんげえちっちぇい!両隣の巨大ビルに挟まれ、申し訳なさそうにたたずむホテル。これじゃあわかんねーよ。



室内も激狭!窓からはビルの壁があと数センチというところまで迫ってきており、採光まったくなし。かるーい牢屋だね、ここ。夕飯は近くにあるキャナルシティ内の、栗原はるみがプロデュースするオシャレなお店へ。客層女性9割と圧倒的アウェーのなか、ビュッフェ形式だったので食いまくった!久々に家庭の味を食べた気がした。栗原はるみ、ごちそうさまー☆



部屋に戻りクタクタになった僕は明日の準備を済ませ、風呂に入りとっとと寝た。時刻11時。













ズゴゴゴゴゴ!ガタガタガタガタガタガタ!深夜、3時過ぎ、けたたましい音が鳴り響いた。



「何だ、何が起こったんだ!?」窓を見るもビルの壁。全く状況がつかめない。人の声もする。



騒音は30分ほど続き、止んだ。九州最後の夜はなんとも落ち着かない心境で過ごすこととなった。



→福岡編に続く



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